灯りを消さないために。
「おばあちゃんち」を守る、
三代目の決断。
近藤泰子さん
近藤雄一さん 飲食店経営
千葉県長生郡長生村生まれ。小学校3年生まで東京で過ごし、家族とともに長生村へ。ダイビングインストラクターとして働いたのち、21歳で「きらく食堂」を継ぐ。現在は祖父母とともに店に立ち、3代目として厨房を切り盛りしている。 https://www.instagram.com/kiraku823/
水羽さんが店を継ぐことになったきっかけは、駅前整備に伴う店舗移転だった。本来は親族が引き継ぐ予定だったが、体調を崩して断念。次を担う人がいない状況の中、水羽さんは自分自身に問いかけた。
「だったら、私がやるしかなくない?」
決断したのは21歳のとき。祖母が人生をかけて守ってきた店を、終わらせたくないという思いが、迷いを上回った。
「潰したくなかったんです。私、ばあばが大好きだから」
引き継ぎで一番不安だったのは、味だった。十分な準備期間がないまま厨房に立ち、自分の作る味が受け入れられるのか、不安があったという。
「自分の作った味を、ちゃんと認めてもらえるのかが一番心配でした」
そんなとき、常連からかけられた「水羽ちゃんなら大丈夫だろう」という言葉に、肩の力が少し抜けた。料理は祖母や親族の背中を見ながら覚え、店の味を日々の仕事の中で体に染み込ませていった。
祖父母はいまも店に立つ。料理だけでなく、お客さん一人ひとりと向き合い、会話を大切にしてきた姿勢を、水羽さんは間近で見てきた。
「お客さんが来てくれるのは当たり前じゃない、というのは、常にばあばから学んでいます」
水羽さんがめざしているのは、新しいことを増やすことではなく、この店を守り続けること。その考えから、店ではあえてデジタル化を進めていない。
「私は厨房に入っているので、お客さんの目を見て『ありがとうございます』を言える機会が少ないんです。だから、レジは必ず自分でやります。最後はお客さんの目を見て、“ありがとうございます”と伝えたいから」
最近は、高校生や若い世代の客も増えている。
「“みんなのおばあちゃんち”みたいな、ホッとする空間にしたいなと思っています。最近は新しく長生村に来た人たちも多いので、昔からここにいる人たちと一緒に、村を盛り上げていけたらうれしいですね」
そんな水羽さんの姿を、祖母は静かに見つめてきた。
「若い人生を縛ってしまっていいのか、正直すごく悩みました。でも、孫が『やる』と決めてくれたことで、気持ちが奮い立ったんです。親子二代・三代で通ってくださるお客さんからの『続けてほしい』『灯りを消さないでほしい』という声にも背中を押されて、孫が決断した以上、私たちもできる限り支えようと決めました」
新しく移り住む人と、昔から暮らす人。その間に立ちながら、きらく食堂の灯りは、今日も八積駅前にで消えることなく続いている。
きらく食堂
長生村・八積駅前で長く親しまれてきた、昔ながらの食堂。昼は定食、夜は居酒屋として、気取らない料理と酒を楽しめる。
0475-32-2652
https://www.instagram.com/kiraku823/











